江戸川乱歩 芋虫 伏字なし
江戸川乱歩 佳子 ( よしこ ) は、毎朝、夫の 登庁 ( とうちょう ) を見送って 了 ( しま ) うと、それはいつも十時を過ぎるのだが、やっと自分のからだになって、洋館の方の、夫と共用の書斎へ、とじ 籠 ( こも ) るのが例になっていた。 yuka 2020年5月31日 / 2020年7月21日. mixiに参加して、 人気コミュニティランキング困ったときには関連ワードCopyright (C) 1999-2020 mixi, Inc. All rights reserved. 江戸川乱歩の「芋虫」は、反戦的な表現が問題となり、発表当時は伏せ字だらけになった短編小説です。今でも伏せ字の状態で販売されている本もありますが、新潮文庫の「江戸川乱歩傑作選」に収録されている芋虫は伏せ字なしで読めます。そんな問題作である芋虫の内容とは、一体どんな内容なのでしょう。簡単なあらすじをご紹介します。登場人物は須永時子とその夫・須永中尉、大家の鷲尾少将の三人です。須永中尉は戦争により両手両足、さらには聴覚や味覚まで失ってしまいます。残ったのは視覚と触覚のみで、コミュニケーションの方法は目や体の一部を動かすことと、鉛筆を口にくわえてカタカナを書くことだけでした。そんな須永の世話をするのは妻の時子です。彼女はいつしか、そんな須永を痛めつけて快楽を得るようになっていきました。しかし須永は何をされても無抵抗で、そのことがさらに時子の嗜虐心を高ぶらせるのでした。両手足を失った須永に鉛筆書きを提案したのは時子でした。最初は「クンショウ」などの文字を書き、新聞に載った自分の記事を眺めることで名誉に浸っていた須永でしたが、やがて夫婦の営みだけが生きる楽しみとなっていきます。次第に無気力になっていった須永ですが、その目にはしっかりと喜怒哀楽の表情が表れ、それは時子にとって限りなき魅力となるのでした。それと同時に、須永に対する歪んだ感情が彼女を支配するようになっていきました。ある夜時子が明かりを灯すと、須永が天井の一点を見つめていました。時子はいつものように行為を始めようとしましたが、彼は鋭く刺すような目で時子のことを見ています。その視線がひどく憎々しく感じられて、気がつけば須永の目を潰してしまっていたのでした。我に返った時子は慌てて医者を呼び、須永に泣きながら謝罪します。そして彼の胸に、指で何度も「ユルシテ」と書くのでした。須永は時子の謝罪にも一切顔色を変えずにいました。そんな様子に、時子は取り返しの付かないことをしてしまったと泣き出し、鷲尾少将のいる母屋へと駆け込みます。長い間懺悔をし、二人で須永のいた部屋へ戻るとそこに彼の姿はなく、ただ枕元の柱に鉛筆で「ユルス」と書かれていただけでした。須永を探しに外へ出ると、井戸の方へ向かう微かな音が聞こえます。そして次の瞬間には身体が見えなくなり、地の底からドボンという水音が聞こえてきたのでした。乱歩ワールド全開の物語だと言えるではないでしょうか。妖しさに一種独特のマニアックな趣向が加わり、読むものを異空間へと導くような雰囲気を感じます。作品発表時はその表現にかなり問題があると判断されて、当局の検問からは全編削除を命じられたり、伏字だらけにされたり、ふんだりけったりな状況だったにも関わらず、乱歩自身はあまり気にしていなかったようです。ちなみに奥さんに読ませたら、「いやらしい」と言われたとか(笑)。物語は時子の視点で進んでいきますので、須永中尉の気持ちは分かりません。戦争によって手足と感覚、さらに妻からは虐げられるようになったことで、何もかもに絶望していたのだとは思います。しかし軍人としての誇り、男としての欲望、妻に対する想い、最期は自害という道を選んでしまったのは、妻を守りたかったからなのか、それとも自分に残されたわずかな人としての尊厳を守りたかったのか。妻に「ユルス」という言葉を残した須永中尉は、自分の尊厳を守りたかったのだと思いました。だから妻を許したのではないでしょうか。妻を守りたかったのではなく、自分の人としての尊厳を守るために、妻を許して逝った気がします。2005年公開の映画「乱歩地獄」は四話のオムニバス形式になっており、すべて江戸川乱歩原作の映像化作品となっています。芋虫の出演者は須永中尉に大森南朋さん、時子に岡元夕紀子さんです。かなり前に見たのでうろ覚えですが、描写がけっこうグロかった印象があります。ただ手足のない人間が出てきますので、生々しい描写が苦手な人にはおすすめしません。衝撃を受けると思います。「乱歩地獄」に収録されているのは、「芋虫」の他は「火星の運河」「鏡地獄」「蟲」になります。グロいのが大丈夫で江戸川乱歩好きならけっこうおすすめです。 ホーム; 純文学のあらすじ 【江戸川乱歩】『芋虫』のあらすじ・内容解説・感想. 暗黒星 (新字新仮名、作品id:58333) 偉大なる夢 (新字新仮名、作品id:57531) 芋虫 (新字新仮名、作品id:57222) 陰獣 (新字新仮名、作品id:57503) 黄金仮面 (新字新仮名、作品id:57241) こちらからもご購入いただけます ¥1 (46点の中古品と新品) 陰獣 芋虫 (江戸川乱歩集) 「(江戸川乱歩集)」全3巻中の2巻. 江戸川乱歩の短編小説の中でも、グロテスク趣味の極致とも言えるのが「芋虫」です。伏字だらけで発表され、戦時中には発禁処分となった問題作です。☞最後の場面も、解釈次第でガラリと印象が変わるのも味わい深い作品です。そんな「芋虫」のあらすじ(ネタバレなし・あり)、発売禁止になった理由について、見ていきたいと思います 負傷して内地へ送り返された夫と病院で初めて見た時、時子はほんとうに悲しくなり、人目もかまわず泣き続けました。彼の四肢の代償として金鵄勲章が授けられ、親戚や町内の人々もやってきて、しばらく騒がしい日々を過ごしました。しかし、やがて世の中も落ち着き、須永中尉のことなど世間の人々から、すっかり忘れ去られてしまいます。 田舎の一軒家で、二人は静かに生きていました。しかし、夫の旺盛な食欲・情欲に影響されてか、時子もまた肉欲の餓鬼となり果てていったのです。ある時、彼女の中の野生がいっそう激しくなり突然、夫の布団の上へと飛びかかっていきました。夫は急なことに驚き、つぶらな両目で(唯一、須永中尉の顔面における正常な器官)で、時子を睨みつけるのでした。時子は「何だい、こんな眼」と言いながら、病的に興奮し無感覚になっていきました。ハッと気づいた時に、眼前に広がっていた光景とは・・・以上、簡単なあらすじでした。これだけでも尋常でない程おどろおどろしい小説ということが伝わりますが、乱歩の描写はもちろんこんなものではありません。結末がお知りになりたい場合は、次の詳細なあらすじをどうぞ。 わずかの年金では暮らしがおぼつかなかった2人は、夫の上長官であった鷲尾少将の好意に甘えて、邸宅の離れの座敷に無償で住まわしてもらっています。 夫が病院から帰ってきた当初こそ、四肢の代償として金鵄勲章が授けられたり、親戚や町内の人々もやってきたりと、騒がしい日々を過ごしました。しかし、やがて世の中も落ち着き、須永中尉のことなど世間の人々から、すっかり忘れ去られてしまいました。時子は鷲尾少将からも「あの廃人を三年の年月、少しだって厭な顔を見せるではなく、自分の欲をすっかり捨ててしまって、親切に世話をしている」と言われ、貞節な妻として思われていました。初めの頃は確かにそうでしたが、今の彼女の心のうちには、情欲の鬼が巣くっているのです。哀れな亭主を、ただ自分の情欲を満たすだけのために飼ってあるけだもののように、または一種の道具のようなものと、思うほど変わっていたのです。 夫は体は無残な状態ですが、食欲は充分あり、健康を保っていました。また、不自由であるが故なのか、夫はいっそう情欲が旺盛になっていました。ただ、常人の頃に教え込まれた軍隊的な倫理観と敏感な情欲は彼の頭の中で矛盾するのか、苦悶の表情を浮かべているようにも見えました。時子は、そんな表情を見るのが嫌いではありませんでした。むしろ、妙に弱い者いじめの嗜好を持っていた彼女は、相手をいたわるどころか、情欲に迫っていくのでした。 ある晩、時子は悪夢で目が覚めます。横を見ると、生きたコマのような肉塊がありました。夫は天井をじっと見つめていました。時子は不気味に思い、目が冴えて眠れなくなりました。そして、過去の出来事が思い出されるのでした。  そんなことを思い出してるうちに、彼女の中の野生があらあらしくなり、湧き上がる兇暴な力を押さえることができず、突然夫の布団の上に飛びかかっていきました。夫は怒ったのか、叱責のまなざしで彼女を睨みつけました。かまわず向かっていく時子でしたが、夫はいつものように妥協せず、刺すように彼女を見据えるのでした。時子は「なんだい、こんな眼」と叫びながら、病的に興奮しながら夢中になって両手を相手の眼にあてがいました。そしてハッと気づくと、彼女の下で、眼から真っ赤な血を噴き出した廃人が踊り狂っていたのです。 その時、彼女は”夫の物言う両眼を、安易な獣になりきるために邪魔なもの”、さらに本心では”夫をほんとうの生きた屍”にしてしまいたかったという、己の恐ろしい考えに直面しました。時子は「ギャッ」と叫びながら、医者の家へと走りました。医者がやってきても、夫はまだ同じように激しく踊り狂っていました。痛み止めの注射、手当をしてもらい、医者は急いで帰っていきました。時子は、夫がもがき止んだ頃、泣きながら「すみません」と言い続け、胸元に「ユルシテ」と幾度も書きました。時間も経ち、しだいに夫の様子も落ち着いてきたころ、また胸に「ユルシテ」と書きましたが、肉塊は身動きせず表情も変えませんでした。 時子は何と言うことをしてしまったのかと、泣き出しました。そして、鷲尾少将に長い懺悔をするのでした。そして、少将とともに須永中尉のいるはずの部屋へ向かったのですが、そこはもぬけの殻でした。時子は、夫がさっきまで寝ていた枕もとの柱に「ユルス」としるされているのを見つけます。彼女はハッとすべての事情がわかったような気がしました。夫が自殺をしたのではないかということを。急いで外に出、鷲尾家の召使いたちも呼び、闇夜の捜索が始まりました。須永中尉の書いた「ユルス」には、時子の行為に立腹して死ぬのではないという意味が込められており、それがより彼女の胸を痛くするのです。時子と少将が、庭の古井戸のある方へ向かっている時、這うようなかすかな音が聞こえてきました。そこには、真っ暗な一物がのろのろうごめいていたのです。ゆっくり前進していましたが、突然頭がガクンと下がり、身体全体がずるずると地面の中へと消えていきました。そして、地の底から、トボンと鈍い水音が響きました。この小説はどう読んでも読後感は重いものになると思いますが、須永中尉が柱に書いた「ユルス」の意味、井戸に身を投げた理由、これらをどう解釈するかで、さらに印象は変わります。いったい、須永中尉は何を許し、井戸に身を投げたのでしょうか?これはシンプルに、”病的に興奮した妻が夫の目を潰したこと”について許すと言っているのだと思います。血だらけになった目を見て我を取り戻した妻は、「ユルシテ」と中尉の胸元に何度も書きました。これに対する答えが「ユルス」です。 柱にこの文字を書いた時点で、須永中尉はこれから身を投げることを決心しています。死ぬ前に、はっきりと妻に伝えておきたいと思ったのでしょう。そうでなければ、”妻を恨んだまま命を絶った”と思われる可能性が高いです。妻を余計に苦しめたくないという夫の優しさではないでしょうか。この理由については解釈が分かれるところだと思います。どちらの理由を採用するかでただでさえ悪い読後感がさらに重くなってしまいます(だが、そこがまた魅力だと思っています)  大まかに言うと、この2点ではないかと想像します。自分のためなのか、妻のためなのか、大きな違いですね。妻のためということではあれば、少しだけ救われるような気がします。ただ、極限状態の人間の思考ですから、自分のため・妻のため とはっきりと分かれておらず、もっと混沌したものなのかもしれません。考えても明確な答えは出ませんが、この結末だからこそより印象に残る作品になるのでしょう。それも乱歩の狙いなのかもしれません。昭和4年(1929年)に雑誌「新青年」に発表されたこの作品は、過激な表現が多いため伏字だらけで発表されました。当時は、プロレタリア文学が盛んなこともあってか、反戦小説として左翼から激賞されました。たしかに、戦争の悲惨さ、極端な例ではありますが傷痍軍人のその後が描かれており、戦争の恐ろしさを強調しているように思えます。やがて、戦争が激しくなっていき、昭和14年(1939年)に発禁処分となったのです。 ちなみに、乱歩自身はこのことについてどう思っていたのでしょう?「左翼より賞賛されしものが右翼に嫌われるのは至極当然の事であり私は何とも思わなかった。」「夢を語る私の性格は現実世界からどのような扱いを受けても一向に痛痒を感じないのである」と、まったく意に介していないようです。純粋に、苦痛・快楽・エゴといった人間の醜い部分を書きたかったのではないかと思います。 もちろん、現在は「芋虫」が収録されている本が、複数の出版社から出ています。本によっては、一部伏字のままになっているものもあるようですが、私の持っている「江戸川乱歩傑作選」(新潮社)の文庫では、全て掲載されています。また、丸尾末広による漫画バージョンもあります。小説ではイメージしにくい状況が、明確に描かれており、より深く江戸川乱歩の世界へ入り込めることでしょう。☞江戸川乱歩の短編小説「芋虫」について、あらすじ・発禁になった理由について、見てきました。あらすじだけでも、後味の悪い濃い作品ということが伝わったのではないでしょうか。読後は「気分が悪くなった」という感想を抱く人も多いようです。ミステリー小説の要素は薄いですが、このおぞましいほどの心理描写は一読の価値があると思います。☞また、この作品は、時子の視点で語られており、須永中尉がどう思っているかははっきり書かれていません。須永中尉の立場を深く想像して読んでみると、また違った見え方がしてくるのかもしれません。はじめまして。当ブログを運営しているにんまりです。普段のほほんと生きている私が、さらにのほほんとできる生活を目指して、ブログに挑戦中の会社員。好きなこと(読書/お笑い/家族・子ども)や気になる話題について更新してます。 ”調和””のんびり””おもんぱかる”などの言葉にピンとくる人とつながれたら嬉しいです。はじめまして。当ブログを運営しているにんまりです。普段のほほんと生きている私が、さらにのほほんとできる生活を目指して、ブログに挑戦中の会社員。好きなこと(読書/お笑い/家族・子ども)や気になる話題について更新してます。 ”調和””のんびり””おもんぱかる”などの言葉にピンとくる人とつながれたら嬉しいです。